グレード制(G1・G2・G3)とは?格付けの基準と決め方を解説

競馬の基礎知識

競馬中継やニュースでよく耳にする「GⅠ」「GⅡ」「GⅢ」は、重賞競走に付けられた格付けを表す記号です。JRA(日本中央競馬会)の重賞は、1984年からこの3段階で格付けされています。GⅠ・GⅡ・GⅢの違い、格付けを審査する国内外の組織と基準、海外の「Group」「Grade」との関係、中央競馬と地方競馬(NAR)での表記の違い、そして格付けが実際に変わった例を、JRA・NARと国際的な格付け基準書の公式情報をもとに見ていきます。

グレード制とは何か

JRAの競馬用語辞典によると、グレード制は重賞競走の位置づけを明確にするため、1984年から行われている格付けです。「格」を表す記号には「GRADE」の頭文字である「G」を使い、GⅠ・GⅡ・GⅢの3つに分類しています。障害競走の格付けは、J・GⅠ、J・GⅡ、J・GⅢと表記します。JRAの英語版ガイド「HORSE RACING IN JAPAN 2014」は、障害競走にグレード制を導入したのは1999年だとしています。

格付けの対象になる重賞競走について、同じ用語辞典は「特別競走の中でも特に賞金が高額で、重要な意義をもったレース」と定義し、賞金や歴史と伝統・競走内容などで格付けされていると説明します。

重賞を走るサラブレッドなど、競走馬の品種の違いは「軽種馬とは?サラブレッドとアラブ・アングロアラブの違いを解説」で取り上げています。

GⅠ・GⅡ・GⅢの違い

JRAの馬主向け「よくあるお問い合わせ」は、3段階の位置づけを次のように示しています。

格付けJRAによる位置づけ
GⅠ原則として各距離体系における最優秀馬を選ぶための最高峰の競走で、生産の指標として最も重要な意義を持つ競走
GⅡGⅠに次いで重要な競走で、GⅠの優勝馬が比較的容易に出走できる競走
GⅢ原則としてGⅠ・GⅡへのステップとなる競走。3(4)歳以上の競走は、出走資格・負担重量・距離などに多様性を備える

いずれも障害競走のJ・GⅠ、J・GⅡ、J・GⅢを含む定義です。同じページによると、格付けは平地競走・障害競走別に、賞金・負担重量・歴史と伝統・競走内容などをもとに行われます。

格付けは誰がどのような基準で決めるのか

国内の審査:日本グレード格付管理委員会

JRAの「よくあるお問い合わせ」によると、平地の重賞は「日本グレード格付管理委員会」がGⅠ・GⅡ・GⅢのいずれかに格付けし、格付けを得られない場合は「新設重賞」または「重賞」と表記されます。一方、障害競走のJ・GⅠ〜J・GⅢは、JRAが格付けするとしています。

地方競馬のダートグレード競走の格付けにも、同じ委員会が関わっています。地方競馬の主催者やNAR、JRAが2022年11月28日に連名で発表した資料「全日本的なダート競走の体系整備について」は、体系整備に伴う格付けの新規・変更・昇格の申請はすべて日本グレード格付管理委員会で承認済みだと記しています。

審査に使われる数値:レースレーティング

格付けの審査で用いられる数値の一つが「年間レースレーティング」です。JRAの「2025年度 重賞・オープン特別競走レーティング」のページは、これをそのレースで上位4着までに入った馬の公式レーティングの平均値と定義し、競走の質を表す数値として格付審査などに用いるとしています。牝馬限定戦以外のレースで牝馬が4着以内に入った場合は、牝馬アローワンスとして一律4ポンドを加えて計算します。

ここでいう公式レーティングは、その馬がその年度に得た最高のレーティングのことです。115ポンド以上の馬はIFHA(国際競馬統括機関連盟)の専門部会であるWBRRC(ワールドベストレースホースランキング委員会)が、114ポンド以下の馬はJRAのハンデキャッパーとNARのレーティング担当者らが協議して決めます。地方競馬が主催する交流重賞のレーティングは、NARのダートグレード競走特設サイトで発表されています。

昇格できるかどうかにも、この数値が使われます。2025年1月にしらさぎステークスのGⅢ昇格が承認された際、JRAは昇格の条件を「パターンレースレーティング(過去3年平均)」と直近の年間レースレーティングの両方が格付基準値を満たすことだと説明しました。このときに示された3(4)歳以上のGⅢの格付基準値は105.00です。

国際的な枠組み:ICSブックとIRPAC・SITA

日本の格付けを国際的に位置づけているのが、毎年発行される基準書「International Cataloguing Standards and International Statistics」(ICSブック)です。IFHAと連携して発行され、その基準はSITA(Society of International Thoroughbred Auctioneers、世界の主要なセリ会社でつくる団体)の承認を受けています。2026年版のICSブックは、その年に世界の主要なセリ会社のセリ名簿でGroup/Graded競走やリステッド競走として扱われるレースを、国ごとに一覧にしたものです。

ICSブック2026年版は、こうした国際的な仕組みの成り立ちを次のように説明しています。1981年、セリ名簿の基準を世界で統一するため、ICSC(International Cataloguing Standards Committee)が設立されました。当初はイングランド・フランス・アイルランド・アメリカの競馬統括団体、生産者団体、国際的なセリ会社の代表で構成され、1995年に南米の競馬団体OSAF、1996年にアジア競馬連盟(ARF)が加わっています。

その後、IFHAが2002年にIRPAC(International Grading and Race Planning Advisory Committee)を設置し、2007年にICSCが担っていた格付けに関する役割がIRPACへ移されました。2026年版で示されている現在の役割分担は次のとおりです。

  • 同じパート内での格付けの変更(個々のレースの昇格・降格など)は、地域ごとの委員会が決め、IRPACはその決定を確認する。GⅠに関する決定を含む重要な決定は、SITAに報告される
  • 国・地域をどのパートに入れるか(パート間の昇格・降格)は、地域の委員会の推薦をIRPACが審査し、SITAが承認する

パートI〜IVの区分と日本の位置

ICSブックは掲載する国・地域を、平地競走についてパートI・パートII・パートIIIの3段階に分け、障害競走はパートIVとしてまとめています。パートIのGroup/Graded競走とリステッド競走では、3着までの馬がセリ名簿で太字(ブラックタイプ)の扱いを受けます。パートIIの格付けはその国の中だけで通用し、どの競走もリステッド競走と同等の扱いです。パートIIIの競走は、ブラックタイプの対象になりません。

日本は2026年版でパートI(平地)とパートIV(障害)に掲載されています。パートIで格付けを審査する機関として、ICSブックはヨーロッパ各国のEuropean Pattern Committee、アメリカのTOBA American Graded Stakes Committee、カナダのThe Jockey Club of Canadaを挙げ、日本についてはオーストラリア・香港・ニュージーランド・南アフリカ・アラブ首長国連邦などとともにAsian Pattern Committee(アジアパターン委員会)が担当すると記しています。

この委員会の決定を受けて、国内の基準が変わった例もあります。JRAの「2023年度 重賞・オープン特別競走レーティング」のページは、アジアパターン委員会の決定に伴い、日本グレード格付管理委員会における3歳馬競走の格付基準値が変更されたと伝えています(2023年以降の競走が対象)。

パートI国に求められる条件

ICSブック2026年版の「IRPAC Guidelines」によると、パートIの国は世界の主要な競馬国で構成されることを想定しており、主に次の条件があります。

  • 自国のGroup/Graded競走を監督・維持する委員会や業界団体を持つこと
  • Group/Graded競走に、馬の生産地・調教地・馬主の所在地による出走制限を設けないこと(国際的な競走として開かれていること)
  • レーティングなどにもとづいてレースの質を評価する仕組みを導入・運用すること
  • 例外的な事情がない限り、GⅠ競走を2つ以上、またはGⅠ1つ以上を含むGroup/Graded競走を合計10以上持つこと

この最後の条件は、2024年版では「GⅠ競走を最低1つ」でした。2025年版から、現在の形に改められています。

個々のレースについても条件があります。例外的な事情がない限り、出走馬の質が格付けに見合わなければ降格、または格付けを失います。既存の競走を昇格させるには、ほぼ同じ時期・同様の条件・同程度の賞金で最低2年間行われ、質の基準を満たしている必要があります。実績のない新設競走にいきなりGⅠ・GⅡを与えられるのは、地域や世界にとって重要な事業に伴う場合など例外的なケースに限られ、その場合も毎年見直され、3回施行しても質が基準に届かなければ自動的に降格するとされています。

日本の「G」表記と海外の「Group」「Grade」の関係

国際的な格付けの記号には2つの系統があります。ICSブックの解説によると、Group表記(G1・G2・G3)は1971年に始まり、イングランド・フランス・ドイツ・アイルランド・イタリアの競走に使われるようになりましたが、北米のセリ名簿に使われたのは1973年からです。Grade表記は、1973年にアメリカとカナダで同じように始まりました。ICSブックは両者を「Group/Graded」とひとまとめにして扱っています。

日本の「G」は、前述のとおり「GRADE」の頭文字です。JRAの英語版ガイドは、日本がグレード競走の半数以上を外国調教馬に開放したことを受けて、2007年にパートIへ昇格したとしています。JRAの用語辞典によると、このパートI昇格に伴い、平地競走では国際格付けを持つ競走をGⅠ・GⅡ・GⅢ、それ以外の競走をJpnⅠ・JpnⅡ・JpnⅢと表記するようになりました。

同じ英語版ガイドによると、パートI昇格後は国際的に認められる日本のグレード競走が年々増え、2010年にはJRAの平地グレード競走がすべて外国調教馬に開放されました。ジャパンカップについては、それより早い1992年にパートIの格付けを得ています。

JRA(中央競馬)と地方競馬(NAR)の格付けの違い・交流重賞

NARのダートグレード競走特設サイトの解説によると、日本の競馬は芝の中央競馬、ダートの地方競馬という2本立てで発展してきました。かつての中央競馬ではダートは芝を補う位置づけにとどまり、ダートの重賞はほとんど組まれていなかったといいます。

中央と地方の交流が大きく進んだのは、「交流元年」と言われる1995年です。この年から、地方競馬の主要重賞に中央の馬が、中央のダート重賞に地方の馬が出走できるようになりました。1997年度には中央と地方のダート交流重賞に共通の格付けが導入され、これらは「ダートグレード競走」と呼ばれるようになります。

ダートグレード競走も平地競走なので、前述の「G」と「Jpn」の使い分けが当てはまります。国際格付けを持つ競走はGⅠ・GⅡ・GⅢ、それ以外はJpnⅠ・JpnⅡ・JpnⅢです。前出の2022年11月の資料「全日本的なダート競走の体系整備について」では、地方競馬は2028年から段階的に「Jpn」表記の使用をやめ、すべてのダートグレード競走を国際競走とすることを目指すとしていました。

格付けは変わることがあるのか

格付けは固定されたものではありません。ICSブックの基準そのものが、レースの質が格付けに見合わなくなれば降格することを前提にしています。

国単位の例もあります。ICSブック2024年版の解説によると、ウルグアイは1985年10月にパートIに加わりましたが、1992年版に向けた全面的な見直しでパートIIへ降格しました。2024年版ではパートIIに掲載されていたウルグアイは、2025年版からパートIに戻っています。

日本国内の重賞でも、昇格は実際に起きています。JRA公式サイトのレース紹介によると、大阪杯は1957年に「大阪杯」として創設され、1964年に「サンケイ大阪杯」、1989年に「産経大阪杯」となりました。2017年、中距離適性を持つ一流馬が国内の春季競馬に出走する機会を広げ、魅力あるレースを提供するため、GⅡからGⅠへ昇格し、レース名も「大阪杯」に戻っています。

2027年度に向けては、新たな昇格の申請も出されています。JRAは2026年9月28日、GⅠの前哨戦となっているGⅢのうち、競走内容が充実している根岸ステークス、オーシャンステークス、キーンランドカップ、みやこステークス、武蔵野ステークスの5競走について、GⅡへの昇格を日本グレード格付管理委員会に申請すると発表しました。リステッド競走のフランスギャロ賞キャピタルステークスについても、GⅢへの昇格を申請するとしています。

いずれもこの発表の時点では申請の段階で、昇格が決まったわけではありません。格付審査は2027年1月に実施される予定です。先に挙げたしらさぎステークスも、同委員会の審査で昇格申請が承認されたことで、GⅢの格付けが決まりました。

地方競馬では、前出の2022年11月の資料が、浦和競馬場のさきたま杯をJpnⅡからJpnⅠへ昇格させることなどを示しました。NARが公表している2026年のダートグレード競走一覧では、さきたま杯はJpnⅠとして掲載されています。

確認できなかったこと

  • 日本グレード格付管理委員会の構成(どの団体の誰が委員を務めているか)や、設置の時期を示したJRA・NARの公式資料は見当たりません。
  • ICSC・IRPAC・SITAの日本語の正式名称は、JRA・NARの公式サイトでは見当たりません。
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