「競走馬の名前に決まりはあるの?」「同じ名前の馬はいるの?」と気になったことはないでしょうか。競走馬の馬名には、文字数や使える文字、使えない名前の条件、一度使われた名前をいつ再び使えるかといった決まりがあります。馬名を登録するのは公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル(JAIRS)で、JRA(日本中央競馬会)とNAR(地方競馬全国協会)も、それぞれの規程で登録しない馬名を定めています。
結論
- 馬名はカタカナで、2文字から9文字です。1文字の馬名と10文字以上の馬名は、外国で馬名が登録済みの一部の輸入馬を除いて登録できません。
- 馬名を登録するのはJAIRSで、申込みをするのは馬の所有者です。JRAやNARで競走馬登録を受けるには、馬名登録の完了後に交付される「馬名登録通知書」が必要です。
- 現役馬など登録中の馬の馬名、父母の馬名、GⅠ競走の勝ち馬など著名な馬の馬名とは、同じにも紛らわしくもできません。奇きょうな馬名や、広告宣伝を目的とした馬名も登録できません。
- 競走馬登録を抹消された馬の馬名は、抹消された年の翌年1月1日から4年間は使えません(重賞の勝ち馬などは9年間)。期間が過ぎれば再び使えるようになりますが、GⅠ競走の勝ち馬などの馬名は再使用の対象外です。
- 競走馬登録を受ける前なら、馬名変更の回数に制限はありません。競走馬登録のあとは、中央・地方・外国のどの競走にも出走していない馬に限り、1回だけ変更が認められます。
馬名はだれが、いつ登録するのか
登録するのはJAIRS、申込みは所有者
JAIRSの「馬名登録の概要について」によると、馬名登録はJAIRSが行い、競馬に出走させるには、馬名登録のあとにJRAまたはNARでの競走馬の登録が必要です。
申込みをするのは馬の所有者です。調教師などの代理人が申し込む場合は、委任状が必要になります。馬主登録から競走馬登録までの流れは、「馬主になるには?JRA・地方競馬の馬主登録の要件・流れ・費用を解説」でまとめています。
申込みができる時期
JAIRSによると、内国産馬の血統登録証明書はおおむね当歳の12月ごろに発行され、それ以降であれば、希望する馬名をいつでも申し込めます。JRAの馬主向けFAQは、馬名の登録は競走馬を購入した後にできるとしたうえで、馬が美浦または栗東のトレーニング・センターに初めて入厩する前までに、馬名登録を完了しておく必要があると説明しています。
登録が完了すると、馬名を記載した「馬名登録通知書」が申込者に送られます。この通知書は、JRAで競走馬登録をする際に必要な書類です。地方競馬でも、NARの業務方法書が、馬の登録を受けようとする人に馬名登録通知書の提出を求めています(協会が別に定める場合を除く)。
申込みの方法と記入する内容
申込みは、インターネット、FAX、郵送のいずれかで行います。インターネットでの申込みと申込状況の照会には、JAIRSウェブサービス(JWS)を使います。JWSでは登録済みの馬名を検索でき、同名馬や類似馬名の確認にも役立ちます。利用にはIDとパスワードが必要です。
JAIRSの「馬名登録実施基準」(以下、実施基準)が申込書に求める項目は、次のとおりです。
- 希望馬名(カタカナで表示。外国語に由来するときは原則として原語を併記し、拗音と促音は明記する)
- 希望馬名の意味と由来
- 当該馬の品種、血統登録番号、血統
JAIRSの記入案内は、希望馬名をできるだけ第3希望まで書くよう求めています。アルファベットでの表示(欧字名)も、意味・由来とあわせて記入します。品種の欄に入るサラブレッドなどの区分については、「軽種馬とは?サラブレッドとアラブ・アングロアラブの違いを解説」が参考になります。
審査の仕組み
申込みのあった馬名は、登録の前に必ず馬名審査会にかけられます。審査会のメンバーは、JAIRSの理事長が指名します。馬名登録に関する重要事項を審議する場としては、JRA・NARの担当理事や学識経験者などが委員を務める馬名審議委員会があります。
馬名の文字数と使える文字
カタカナで2文字から9文字
JRAの馬主向けページは、馬名を「2〜9文字のカタカナ」と説明しています。規程の上では、JRAの競馬施行規程(第17条・第22条)とNARの業務方法書(第12条・第14条の2)が、どちらも馬名を片仮名で表示すると定め、1字の馬名と10字以上の馬名を登録しない馬名に挙げています。
長音符号「ー」は使うことができ、1字として数えます。「ヲ」は、助詞としての正しい用法でなければ使えません。「ヴ」を使えるのは、外来語としてその原音の意識がなお残っているものに限られます。
仮名遣いは、内閣告示の「現代仮名遣い」と「外来語の表記」に従います。
同じ音の扱い
実施基準では、「ヲ」と「オ」は同音(同名)として取り扱われます。「ヴ」も、後ろに拗音が付かない場合は「ブ」と同じ扱いです。「ヴァ」「ヴィ」「ヴェ」「ヴォ」「ヴュ」は、それぞれ「バ」「ビ」「ベ」「ボ」「ビュ」と同音になります。
アルファベット表記(欧字名)
カタカナの馬名には、付帯としてアルファベットの表記も付きます。使える文字は英語の26文字(AからZ)で、空白を含めて18文字以内です。終止符(ピリオド)は使えません。日本語に由来する馬名には内閣告示の「ローマ字のつづり方」を用い、長音符号とオ段の次の「ウ」「オ」は表記しません。JAIRSの記入案内によると、アルファベット表記で使える記号はアポストロフィー「’」だけです。
登録できない馬名
JRAの競馬施行規程第22条は、登録しない馬名として次の7項目を挙げています。
- 有名な馬の名称・馬名と同じ、またはこれらと紛らわしい馬名
- 父母の名称・馬名と同じ、またはこれらと紛らわしい馬名
- すでに競走馬登録・地方馬登録を受けている馬の馬名と同じ、またはこれと紛らわしい馬名(抹消後、変更後の一定期間の馬名を含む)
- 奇きょうな馬名
- 明らかに営利のための広告宣伝を目的として、会社名・商品名などと同じ名称を付けたと認められ、かつ競走馬の馬名としてふさわしくない馬名
- 1字の馬名、または10字以上の馬名
- 血統の登録の原簿に記載されている馬名と異なる馬名
JAIRSの実施基準は、これをさらに細かく定めています。
同じ・紛らわしい馬名
馬名登録原簿に記載されている馬名や、JRAの馬名登録、NARの馬登録、繁殖登録を受けた馬名とは、同じにも紛らわしくもできません。父馬・母馬の馬名も同様です。
著名な馬の馬名
実施基準は、次の馬名と同じ、またはこれらと紛らわしい馬名を登録できないとしています。
- サラブレッド造成から今日まで功績を残した著名な馬の馬名
- 我が国の競走馬の系統上、特に有名な種雄馬・種雌馬の馬名
- 国際保護馬名
- 中央競馬のGⅠ競走・J・GⅠ競走、地方競馬のGⅠ競走・JpnⅠ競走などの勝ち馬の馬名(対象となる競走と年の範囲は、実施基準が年代ごとに細かく定めています)
- 1983年以前の東京優駿、皐月賞、菊花賞、桜花賞、優駿牝馬、エリザベス女王杯、天皇賞、有馬記念、宝塚記念の勝ち馬の馬名
- 外国の重要な競走の勝ち馬の馬名(イギリスのダービー、アメリカのケンタッキーダービーなど、実施基準の別表に列挙)
- イギリス(アイルランドを含む)、フランス、アメリカ(カナダを含む)、オーストラリア(ニュージーランドを含む)で最近10年間にリーディングサイアー(獲得賞金別)の10位までになった種雄馬の馬名
このほか、1981年以前の中山大障害、全日本アラブ大賞典、2001年以前の東京ダービー、楠賞全日本アラブ優駿、1996年以前の東京大賞典の勝ち馬の馬名も含まれます。GⅠ・JpnⅠといった格付けの仕組みは、「グレード制(G1・G2・G3)とは?格付けの基準と決め方を解説」で紹介しています。
奇きょうな馬名
実施基準は、奇きょうな馬名として次の項目を挙げています。
- 馬名としてふさわしくない馬名
- 著名な人物などの名称と同じ馬名(歴史的に一般化している場合、愛称や名のみの場合は認めることがある)
- 公序良俗に反する馬名、侮辱的とみなせる馬名
- 言葉の意味と性別が異なる馬名
- 馬の品種名、馬の呼称、競走名、毛色・服色・帽色に使われている色の名称、実況放送や成績掲載に支障が出る用語(日本語・英語・フランス語。前後に付属語を付した場合は認めることがある)
- アルファベットまたは数字をカタカナで表記しただけの馬名
さらに実施基準は、次の馬名を「認めないことがある」としています。
- 時事に関して、競走馬の馬名として不適切なもの
- 動植物の名称のもの
- 有名な地名や山河の名称(国名、首都、都道府県名など)のもの
- 映画、雑誌、テレビ番組、曲名などの名称のもの
- 冠名を付けている馬主の場合、冠名のみを馬名としたもの
- 明らかに商品名と判断されるもの
そのほかの登録できない馬名
明らかに営利のための広告宣伝を目的として会社名・商品名などと同じ名称を付けたと認められ、かつ馬名としてふさわしくない馬名は登録されません。馬名審査会や馬名審議委員会が馬名として不適当と認めた馬名も、登録の対象外です。
同じ名前の馬はいるのか:馬名の再使用ルール
一度使われた馬名は、期間を置けば再び使える
現役馬や登録中の馬と同じ馬名は付けられません。一方で、競走馬登録が抹消された馬の馬名は、一定の期間が過ぎれば再び登録に使えるようになるため、時代の違う馬が同じ馬名になることはありえます。
JRAの競馬施行規程は、競走馬登録または地方馬登録を抹消された馬の馬名を、抹消された日の属する年の翌年1月1日から4年を経過しないあいだ登録しないと定めています。馬名を変更した馬の旧馬名は、変更した日の属する年の翌年1月1日から1年を経過するまで使えません。
実施基準では、再び使えるようになる日が馬の区分ごとに決まっています。どの区分も、抹消や死亡などがあった年の翌年1月1日から期間を数えます。
| 区分 | 再び使えるようになる日 |
|---|---|
| JRA・NARで競走馬登録を受けた馬(下の重賞勝ち馬などを除く) | 登録が抹消された日の属する年の翌年1月1日から4年を経過した日 |
| 中央競馬の重賞競走、地方競馬のJpnⅡ・JpnⅢ競走などの勝ち馬(GⅠ競走の勝ち馬は再使用の対象外) | 競走馬登録が抹消された日の属する年の翌年1月1日から9年を経過した日 |
| 繁殖登録を受けた種雄馬 | 死亡または用途を変更した日の属する年の翌年1月1日から14年を経過した日 |
| 繁殖登録を受けた種雌馬 | 死亡または用途を変更した日の属する年の翌年1月1日から9年を経過した日 |
| 馬名登録だけで競走馬登録・繁殖登録を受けていない馬 | 死亡が判明した日の属する年の翌年1月1日から4年を経過した日、または馬名登録原簿に記載された日の属する年の翌年1月1日から9年を経過した日のうち、早い日 |
| 馬名を変更した馬の旧馬名 | 変更した日の属する年の翌年1月1日から1年を経過した日 |
たとえば、2026年に競走馬登録を抹消された馬の馬名は、2027年1月1日から4年を経過した2031年1月1日から、再び使えるようになります。これは、抹消後に地方競馬などで再び馬の登録を受けず、繁殖登録も受けていない馬で、重賞などの勝ち馬でもない場合の例です。
旧馬名には例外があります。JRAに競走馬登録された馬が、旧馬名を再び使えるはずの日になっても未出走のときは、その馬が出走するか、競走馬登録を抹消されるまで、旧馬名は使えません。
著名な馬の馬名は再使用されない
上の表の決まりは、著名な馬の馬名には当てはまりません。実施基準は、「登録できない馬名」で挙げたGⅠ競走の勝ち馬などの著名な馬の馬名を、再使用の規定の対象から外しています。そのため、どれだけ期間が過ぎても、こうした馬名が再び使えるようにはなりません。
馬名は変更できるのか
競走馬登録の前
JAIRSは、「JRAまたはNARの競走馬の登録を受けるまでは馬名変更の回数制限はありません」と案内しています。
競走馬登録のあと
競走馬登録を受けた馬の馬名は、原則として変更できません。ただし、中央競馬、地方競馬、外国の競馬のいずれの競走にも出走したことのない馬は、1回に限って変更できます。JRAの競馬施行規程第26条とNARの業務方法書第16条が、それぞれこの決まりを定めています。
変更の手続きには料金がかかり、JRAの競馬施行規程は変更登録料を5,000円、NARの業務方法書は変更手数料を3,000円としています。
競走馬登録を抹消された馬は、そのままでは馬名を変更できません。JAIRSによると、競走馬の登録を受けたことのある馬で馬名を変更できるのはJRAまたはNARの所属馬で、登録を抹消した馬は、いまの馬名でJRAまたはNARの競走馬登録を申し込んだうえで、変更の手続きをします。
地方競馬・外国産馬の扱い
地方競馬の馬名
地方競馬で登録しない馬名は、NARの業務方法書第14条の2が定めています。平地競走の馬では、登録中の馬の馬名が使えないことや、抹消された年の翌年1月1日から4年、変更前の馬名は1年という期間も含めて、JRAの規程と同じ形の決まりになっています。
ばんえい競走の馬は扱いが異なります。登録を受けているばんえい競走の馬の馬名と、登録を抹消されてから5年を経過しないばんえい競走の馬の馬名(変更前の馬名を含む)とは、同じにも紛らわしくもできません。
移籍しても馬名は引き継がれる
JRAの競馬施行規程第23条によると、地方馬登録を受けたことのある馬がJRAで競走馬登録を受けるときは、地方馬登録の抹消証明書に記載された馬名でなければ登録できません。NARの業務方法書にも、JRAまたはNARの登録を抹消された馬は、原則として抹消された馬名と異なる馬名では登録しないという規定があります。
外国産馬は生産国の承認が必要
JAIRSの案内によると、外国産馬の馬名登録と馬名変更は、国際的なルールとして生産国の馬名登録機関の承認を得ることになっています。外国の馬名登録機関への申込みは、JAIRSが行います。
すでに生産国で馬名が登録されている馬は、その馬名を生産国の発音に従ってカタカナで申し込みます。9文字以内にする必要があり、10文字以上になる場合や、すでに日本にある同じ・類似の馬名の場合は、馬名の意味を損なわない範囲で読み替えるか、馬名を変更します。JRAの競馬施行規程第23条は、外国の競馬機関で馬名の登録を受けている馬について、その血統書に記載の馬名を当該国の発音に従いカタカナで表示した馬名でなければ、競走馬登録を受けられないとしています。
生産国で馬名が登録されていない馬は、生産国の馬名登録機関の承認を経て登録されます。アルファベットで空白を含めて18文字以内の馬名を、カタカナ(9文字以内)とあわせて申し込みます。
実施基準は、外国で生まれて外国で出走したことのある競走目的の輸入馬と、外国で生まれた繁殖目的の輸入馬を、生産国で馬名が登録されていることを条件に、ここまでの審査基準の例外としています。競走の目的で輸入された馬の馬名が、すでに登録のある馬名と同じになるときは、生産国の略字を付けて表示します。繁殖の目的で輸入された馬の場合は、JAIRSの案内によると、ローマ数字の記号を付けて登録します。例として、アルデバランⅡ、シアトルダンサーⅡが挙がっています。
国際的なルール
国際競馬統括機関連盟(IFHA)が公表している協約「International Agreement on Breeding, Racing and Wagering」は、第14条で馬名の登録を扱っています。IFHAの案内ページによると、この協約は競馬・生産の統括機関の指針となる任意の協約で、年に1回、IFHAの年次会議で見直されます。第14条の主な内容は次のとおりです。
- 馬名の登録は、生まれた国の権限ある機関が行うか、その承認を得て行う
- 馬名は、生産国の略号を除き、符号や空白を含めて18文字以内
- 頭文字だけでできた馬名や、数字・ハイフン・ピリオドなどの記号を含む馬名は受理されない
- 競走や繁殖での実績で名高い馬の馬名を保護するリスト(International List of Protected Names)を、IFHAが作成して公表する
日本での扱いについて、JAIRSの外国産馬の案内は、「競馬と生産及び賭事に関する国際協約(パリ協約)」の第14条で、頭文字や終止符(ピリオド)を含む馬名は登録できないことになっていると説明しています。この第14条を承認する国(イギリス、アイルランド、フランス、ドイツ、イタリア、UAEなど)で生まれた馬は、生産国で承認されない馬名を日本でも登録できないため、「エービーキング(A.B.King)」のような馬名は登録できない場合があります。
馬名の意味・由来を調べるには
申込書には、希望馬名の意味と由来を書く欄があります。JRAの「競走馬登録馬名簿・馬名意味」のページによると、登録された馬の馬名の意味はJRAホームページの「競走馬検索」で、欧字名はJBISサーチの「馬情報検索」で見られます。
確認できなかったこと
- 「紛らわしい馬名」にあたるかどうかを判断する具体的な基準(何文字違えば別の馬名として扱われるかなど)は、「ヲ」と「オ」などの同音の扱いを除いて、JRA・NAR・JAIRSが公開している規程・基準に見当たりません。