「種牡馬になれる馬は、競走馬のうちどれくらいなのか」。結論から言うと、種付けをした種牡馬の頭数や、新しく種牡馬になった馬の数は、JAIRS(公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル)が毎年公表しています。一方で「競走馬の何割が種牡馬になるのか」という割合を示す公式データは見当たりません。
この記事で分かること
- 日本で種付けをした種牡馬(種雄馬)の頭数
- 毎年、新しく供用される種牡馬・繁殖登録される種雄馬の頭数
- 毎年の生産頭数(生まれる馬の数)
- 数字の見方と、割合を計算しない理由
- 公式情報では確認できなかったこと
結論
- 種付けをした種雄馬は、2024年が283頭、2025年が272頭(JAIRSの統計表「地域別種雄馬種付頭数」、いずれも2025年12月31日現在。アラ系統の種雄馬も含む軽種馬の数字。2025年分は、未報告の種雄馬がいるため今後若干増える見込みとされている)。
- 2025年に繁殖登録された種雄馬は36頭、種雌馬は1,596頭(合計1,632頭。JAIRS)。
- 2025年の生産頭数は、サラブレッド8,233頭(アラブ・アングロアラブを含む合計は8,236頭。JAIRS)。
- 種牡馬の頭数と生産頭数はどちらも公表されているが、「競走馬の何割が種牡馬になるか」という割合を示す公式情報は見当たらない。
- 種付けした頭数は種牡馬によって差がある。2025年は、種付けした269頭のうち100頭以上に種付けした種雄馬が46頭、うち200頭以上が6頭(2025年12月1日現在、JAIRS)。
種付けをした種牡馬は何頭?
JAIRSは毎年、その年に種付けをした種雄馬の頭数を発表し、統計データベースにも表を載せています。
| 年 | 種付けした種雄馬 | 種付種雌馬(配合変更を含まない実頭数) | 出典・基準日 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 283頭 | 10,895頭 | JAIRS統計表「2024年 地域別種雄馬種付頭数」「同 地域別種付種雌馬頭数」(2025年12月31日現在) |
| 2025年 | 272頭 | 11,064頭 | JAIRS 2026年2月6日「2025年の種付状況」、統計表(いずれも2025年12月31日現在) |
2024年の統計表は、地域別に数えると284頭になりますが、1頭が2つの地区で供用されていたため実頭数は283頭、と注記されています。JAIRSは2025年の272頭について「昨年より11頭減少」と発表しています。
同じ年の頭数でも、発表の時点によって数字が変わっています。
- 2024年分:2024年12月2日の発表では280頭(種付種雌馬の実頭数は10,863頭)、2025年2月6日の発表「2024年の種付け状況」では282頭(配合変更を含まない種付種雌馬は10,893頭)でした。その後の統計表(2025年12月31日現在)が上の283頭です。
- 2025年分:2025年12月5日の発表では269頭(種付種雌馬の実頭数は11,060頭。2025年12月1日現在の報告頭数)、2026年2月6日の発表では272頭(2025年12月31日現在)です。
2025年分について、JAIRSは「未報告の種雄馬がいるため、今後若干の頭数増加が見込まれます」と注記しています。数字を引用するときは、いつ時点の数字かを確認するのが安全です。
供用予定の種牡馬
シーズンの前には「供用予定種雄馬名簿」も公表されています。
| 年 | 供用予定の種雄馬 | 基準日・出典 |
|---|---|---|
| 2025年 | サラ系統294頭、アラ系統5頭、合計299頭 | 2025年5月30日現在(JAIRS 2025年6月4日発表) |
| 2026年 | サラ系統289頭、アラ系統5頭、合計294頭 | 2026年5月20日現在(JAIRS 2026年5月22日発表) |
2026年の発表によると、サラ系統は前年より5頭減、アラ系統は前年と同数です。地域別では、北海道(日高・胆振・十勝地区)が262頭で全国の89.1%を占め、日高地区だけで225頭、全国の76.5%です。
なお、JAIRSの統計データベースに掲載されている表「2026年供用予定種雄馬地区別・品種別頭数」(2026年5月20日現在)では、合計295頭(サラ系統290頭、アラ系統5頭)、北海道263頭、日高地区226頭となっており、発表文とは1頭の差があります。どちらの数字が正しいかは、JAIRSの公表資料からは判断できません。
新しく種牡馬になる馬、供用をやめた馬は年に何頭?
JAIRSは、新しく種牡馬になった馬に関する数字(初供用種雄馬、繁殖登録された種雄馬)と、供用をやめた馬の数字(供用停止種雄馬)の、3種類の数字を公表しています。集計の対象や時点がそれぞれ異なり、数字同士を直接比較することはできません。
初供用種雄馬
初供用種雄馬は、文字どおり、その年に初めて供用される種雄馬を指す言葉です(JAIRSの資料に、この言葉自体の定義文は見当たりません)。
| 年 | 頭数 | 基準 |
|---|---|---|
| 2025年 | 29頭(サラブレッドのみ) | 2025年4月11日の発表。JAIRSは、種付期間中に繁殖登録される馬もいるため頭数は増加すると思われる、と注記 |
| 2026年 | 34頭(サラブレッドのみ) | 2026年5月20日現在(JAIRS 2026年5月22日発表。同年4月6日公開の記事から1頭増) |
繁殖登録された種雄馬・種雌馬(2025年)
JAIRSの「2025年の繁殖登録頭数」(2026年2月10日)によると、2025年の繁殖登録頭数は、種雄馬が36頭、種雌馬が1,596頭で、合計1,632頭でした。繁殖登録という手続きの意味や、繁殖入りまでの流れは、当ブログの「種牡馬・繁殖牝馬とは?2つの違いと繁殖入りまでの流れをわかりやすく解説」で扱っています。
供用停止になった種雄馬(2025年)
JAIRSの発表(2026年5月14日)では、2026年5月8日までに報告があった2025年の供用停止種雄馬(輸出馬を含む)は33頭(サラブレッドのみ)でした。このうち6頭は、功労馬繋養支援事業の助成対象馬になったと書かれています。
生まれてくる馬は年に何頭?
生産頭数(生まれた馬の数)は、種牡馬の頭数と比べられる、もう一つの公表数字です。
| 年 | 生産頭数 | 出典 |
|---|---|---|
| 2024年 | 7,925頭(サラブレッドのみ。9年連続の増加) | JAIRS 2025年2月4日 |
| 2025年 | 8,233頭(サラブレッド)、合計8,236頭(アラブ1頭、アングロアラブ2頭を含む) | JAIRS 2026年2月6日 |
JAIRSは、2025年の生産頭数が10年連続の増加で、2005年以来20年ぶりに8,000頭を超えたと発表しています。産地別では、日高地区が6,475頭(全国の78.6%)、北海道全体で8,038頭(97.6%)です。
JRAの馬主向け「よくあるお問い合わせ」(1.生産 Q1-2)にも、2012年に6,837頭まで減ったのち再び増加に転じ、2025年の生産頭数は8,230頭、との記載があります。JAIRSの発表(合計8,236頭、サラブレッド8,233頭)とは数字が異なり、FAQにはこの数字の時点や集計の基準は書かれていません。
また、2026年の生産頭数(速報値)は、2026年9月16日のJAIRSの発表で8,225頭でした(統計表は2026年9月15日現在)。JAIRSは、未報告分を踏まえると確定値は8,270頭前後になると予測しており、確定値は2027年1月末に公表される予定です。
血統登録された馬と、その父馬
JAIRSの「2025年の血統登録頭数」(2026年2月6日)によると、2025年の血統登録頭数は8,107頭(内国産7,964頭、輸入馬143頭)で、これらを父馬別に分類すると、父馬の頭数は381頭でした。最も多くの馬が登録された父馬はパレスマリスの178頭、100頭以上が登録された父馬は18頭(前年は11頭)です。この381頭は「血統登録された馬の父馬」を数えたもので、上の「その年に種付けをした種雄馬」とは数えている対象が違います。
数字を並べてみる
| 項目 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 2024年に種付けした種雄馬 | 283頭(2025年12月31日現在) | JAIRS |
| 2025年に種付けした種雄馬 | 272頭(2025年12月31日現在) | JAIRS |
| 2025年の生産頭数(サラブレッド) | 8,233頭 | JAIRS |
| 2025年に繁殖登録された種雄馬 | 36頭 | JAIRS |
| 2025年の供用停止種雄馬 | 33頭(2026年5月8日までの報告) | JAIRS |
なぜ「何割」や「何頭に1頭」を計算しないのか
上の数字から「何頭に1頭が種牡馬になる」といった割合を計算しない理由は、次のとおりです。
- ある年の種牡馬の数は、その年に生まれた馬から出てくるわけではありません。JAIRSの統計表では、2025年に繁殖登録された種雄馬36頭のうち3頭は輸入されて直接繁殖登録された馬で、残る33頭の登録時の年齢は4歳から13歳まで分かれています。また、2025年に種付けをした種雄馬272頭のうち71頭は輸入馬です(いずれも2025年12月31日現在)。このため、同じ年の生産頭数で割っても、「生まれた馬のうち何頭が種牡馬になったか」を表す数字にはなりません。
- 種付けと出産の時期もずれます。JRA日高育成牧場のブログ「馬の資料室」(2022年12月14日)は、馬の正常な妊娠期間を一般に平均335日程度とし、サラブレッドは春の交配で妊娠した繁殖牝馬を約11か月管理して、年明けから始まる分娩シーズンに出産を迎えると説明しています。ここから、ある年の種付けで生まれる馬はおおむね翌年生まれになり、同じ年の「種付け」と「生産」の数字は、別の世代を数えたものになります。
- JAIRSの発表にも、こうした割合を示す数値は見当たりません。
元の数字は、JAIRS公式サイトの統計データベース(「サラブレッドの生産頭数等各種統計」)で年ごとの表を確認できます。
種付けした頭数は種牡馬によって差がある
2025年12月5日のJAIRSの発表(2025年12月1日現在の報告頭数)の数字は次のとおりです。
- 種付けした種雄馬:269頭
- 種付種雌馬の延べ頭数:12,944頭(実頭数は11,060頭)
- 最多種付頭数:パレスマリスの237頭
- 100頭以上に種付けした種雄馬:46頭(うち200頭以上は6頭)
269頭のうち100頭以上に種付けしたのは46頭で、残る223頭は100頭未満でした(269頭から46頭を引いた数)。一方で、最多の馬は237頭に種付けしています。「種付けをした種雄馬の頭数」だけでは、1頭ごとの種付けの規模までは分かりません。
種牡馬になる条件
種牡馬になる条件のうち、繁殖登録、種畜検査(毎年の検査と種畜証明書)、競走馬登録の抹消などの手続きは、「種牡馬・繁殖牝馬とは?2つの違いと繁殖入りまでの流れをわかりやすく解説」で整理しています。
一方で、「どんな競走成績や血統なら種牡馬になれるのか」という基準を定めた公的な資料は見当たりません。JRAの馬主向け「よくあるお問い合わせ」(8.繁殖 Q8-3)には、種付料は競走成績や血統的な背景によって設定されると書かれていますが、種牡馬になるための成績の基準として書かれているわけではありません。また、日本軽種馬協会は事業紹介で、種馬事業について「主要生産地に種馬場を設置し、世界的に優れた種牡馬の導入と種付けを行い」としていますが、個々の種牡馬を選ぶ基準は示されていません。
引退後の進路の全体像
種牡馬は、引退した競走馬の進路の一つです。ほかの進路も含めた全体像は、当ブログの「引退した競走馬はどうなる?主な進路と支援の仕組みを一通り解説」で扱っています。進路ごとの割合が公式に示されているかどうかについても、そちらで確認できる範囲を紹介しています。
確認できなかったこと
以下は、参照した公式情報からは確認できていません。
- 競走馬のうち、何割が種牡馬になるのかという割合
- 種牡馬になるための、競走成績や血統の公的な基準
- 引退した馬の進路別の頭数・割合(種牡馬・繁殖牝馬・乗馬・その他)
まとめ
- 種付けをした種雄馬は、2024年が283頭、2025年が272頭(JAIRSの統計表、2025年12月31日現在)。発表の時点によって頭数は変わる。
- 2025年に繁殖登録された種雄馬は36頭、2025年の供用停止種雄馬は33頭(JAIRS)。
- 2025年の生産頭数はサラブレッド8,233頭(合計8,236頭)で、10年連続の増加(JAIRS)。
- 種付けした頭数は種牡馬によって差があり、2025年は269頭のうち100頭以上が46頭、200頭以上が6頭(2025年12月1日現在、JAIRS)。
- 「何割が種牡馬になるか」といった割合を示す公式情報は見当たらない。
統計は更新されることがあります。最新の数字はJAIRSの公式サイトでご確認ください。
主な情報源: JAIRS公式サイト(軽種馬登録ニュース・統計データベース)、JRA公式サイト(馬主向け「よくあるお問い合わせ」1.生産・8.繁殖、日高育成牧場のブログ「馬の資料室」)、日本軽種馬協会公式サイト(事業紹介)
