引退した競走馬はどうなる?主な進路と支援の仕組みを一通り解説

引退馬のその後

競走馬が引退したあと、どこへ行くのか。この記事では、引退後の主な進路(種牡馬・繁殖牝馬・乗馬・功労馬など)と、それを支える団体・仕組み、そして馬の行方を調べる方法を、公的な情報源で確認できた範囲でまとめます。

この記事で分かること

  • 中央競馬の「登録抹消」と「引退」の関係
  • 引退後の主な進路と、それぞれの概要
  • 数字で見る規模感(生産頭数・繁殖牝馬の頭数)と、確認できなかった数字
  • 引退馬を支える団体と仕組み
  • 馬の行方を調べる方法と、その限界

結論

  • 中央競馬では、JRAの「競走馬登録」を抹消した馬がJRAの施設から退厩し、その後の行き先は馬主と調教師が話し合って決める。行き先の例として、地方競馬への転出、繁殖馬、乗馬への転用がJRAの公式FAQに挙がっている。
  • 引退馬協会は、進路として繁殖馬(種牡馬・繁殖牝馬)、乗馬、使役馬・研究馬などへの用途変更を挙げ、肥育・殺処分となる馬も少なくないとしている。
  • 進路ごとの頭数や割合を示す公式データは見当たらない。
  • 引退馬支援には、中央競馬・地方競馬などの競馬関係者が協力して2024年に設立した一般財団法人TAW、認定NPO法人の引退馬協会などが取り組んでいる。

競走馬の「引退」とは

中央競馬の場合

JRAの馬主向けFAQによると、競走馬登録を抹消した馬はJRAの施設を退厩し、その後の行き先は馬主と調教師の話し合いで決まります。

ただし、登録抹消がそのまま競走生活の終わりを意味するとは限りません。同じFAQでは、抹消後の行き先の一つとして「地方競馬へ転出する場合」が挙げられており、中央競馬を離れたあとに地方競馬で走る馬もいます。なお、JRAの公式サイトに「登録抹消=引退」と定めた記述はありません。

「引退馬」の区分

競馬情報データベースのJBIS-Searchでは、登録状況の区分として、中央競馬または地方競馬で現在競走馬として登録されている馬を「現役馬」、過去に登録されていた馬を「引退馬」としています。この区分に沿えば、中央・地方のどちらでも競走馬として登録されていない馬が「引退馬」にあたります。

本記事では、中央競馬の登録抹消後の行き先を、地方競馬への転出も含めてまとめて扱います。

引退後の主な進路

JRAの公式FAQに挙がっているのは、地方競馬への転出、繁殖馬、乗馬への転用などです。引退馬協会の公式サイトは、これに加えて使役馬・研究馬への用途変更や、肥育・殺処分(食肉処分を含む)となる馬も少なくないことを挙げています。

進路概要(公式情報で確認できた範囲)
地方競馬への転出中央競馬の登録抹消後の行き先の一つ。競走馬として走り続ける進路(JRA FAQ)
繁殖馬(種牡馬・繁殖牝馬)引退後の行き先・用途変更先の一つ(JRA FAQ、引退馬協会)
乗馬・馬術競技馬引退後の行き先・用途変更先の一つ。JRAの引退競走馬への取組みでは、馬術競技馬・乗用馬への転用をはじめとするセカンドキャリアの促進が柱の一つ
使役馬・研究馬引退馬協会が用途変更先として挙げている
養老・余生(功労馬など)繁殖・馬術・乗用などの役目を終えた馬が余生を送る段階。優秀な成績を残した馬を対象にしたJAIRSの助成事業や、養老牧場等の団体への活動奨励金(事業主体は検討委員会、担当・窓口はTAW)がある
肥育・殺処分(食肉処分を含む)引退馬協会が、こうした形となる馬は少なくないと説明している

種牡馬・繁殖牝馬

種牡馬は父馬となる雄馬、繁殖牝馬は母馬となる雌馬です。引退後にこうした繁殖の道に進む馬がいることは、JRAと引退馬協会の双方が示しています。詳しい仕組みは、関連記事「種牡馬・繁殖牝馬とは?2つの違いと繁殖入りまでの流れをわかりやすく解説」で解説しています。

乗馬・馬術競技馬

JRAは、乗用馬・馬術競技馬を引退競走馬の主なセカンドキャリアと位置づけ、そのための再調教(リトレーニング)の指針を策定して普及を図っているとしています。また、引退競走馬だけが出場できる馬術競技会「引退競走馬杯(RRC)」が、馬術競技馬や乗用馬への転用を促す入口として2018年から行われています。現在の種目は障害馬術、馬場馬術、総合馬術、TRECの4つです。

功労馬(養老・余生)

JRAの説明によると、「功労馬繋養支援事業」は、繁殖や乗用などの役目を終えた引退競走馬のうち、現役時代の成績で日本の競馬に貢献した馬の余生にかかる飼養管理費などを支える事業です。1996年に始まり、現在は公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル(JAIRS)が実施しています。助成の対象は、JRA重賞または地方のダートグレード競走を勝ち、余生を送っている馬の所有者です。

殺処分などの重い話題について

引退馬協会は公式サイトで、引退競走馬について「肥育・殺処分(食肉処分含む)となる馬は少なくありません」としています。その頭数や割合を示す公式データは見当たりません。

数字で見る規模感

生産頭数

JAIRSが2026年2月6日に公表した集計によると、2025年の軽種馬の生産頭数は合計8,236頭(うちサラブレッド8,233頭)でした。増加は10年連続で、8,000頭を超えたのは2005年以来20年ぶりです。

繁殖牝馬の頭数

JAIRSが2025年12月18日に公表した「地区別繁殖登録種雌馬頭数」によると、2025年12月1日現在の繁殖登録種雌馬は11,732頭(発表文での表記は「11,732件」)で、10年前(2015年)の119.9%にあたります。

確認できなかった数字

「引退馬のうち何割が種牡馬・繁殖牝馬になるのか」「乗馬になる馬は何頭か」といった進路別の頭数・割合を示す公式データは、JRA・JAIRS・引退馬協会・TAWのいずれにも見当たりません(2026年9月時点)。報道で進路別の頭数が紹介されることもありますが、元になった一次資料は確認できていないため、本記事には数字を掲載していません。

ただし、上の生産頭数や繁殖登録種雌馬の数は、引退馬の進路の内訳を示すものではありません。

引退馬を支える主な団体・仕組み

TAW(一般財団法人 Thoroughbred Aftercare and Welfare)

JRAとTAWの公式サイトによると、TAWは2017年に立ち上げられた「引退競走馬に関する検討委員会」の方針を受けて、中央競馬と地方競馬、馬主、生産者、厩舎関係者などの競馬関係者が協力し、2024年に設立した団体です。JRAのページには、TAWに関わる事業・案内として次のものが挙げられています。

  • 引退競走馬の養老・余生を支援する事業(養老牧場等の取組みを行う団体への活動奨励金。奨励金の交付自体は2018年から行われており、現在の事業主体は検討委員会で、担当・窓口はTAW。JRAの2026年2月2日発表による)
  • 引退競走馬の一時預入れ施設の運営(栃木県宇都宮市のJRA施設〈旧競走馬総合研究所〉で2024年から)
  • 引退競走馬の預託等に関する相談窓口

引退馬協会(認定NPO法人)

公式サイトの団体概要によると、本部は千葉県香取市にあり、2013年に千葉県から認定NPO法人の認定を受けています。公式サイトには、次の取り組みが挙げられています。

  • フォスターペアレント事業:協会が所有する引退馬を「フォスターホース」と呼び、会費や寄付、助成金など多くの人の支えによって生涯にわたり飼養する制度
  • 再就職支援プログラム:引退した競走馬が人と穏やかに暮らせるよう、馴致調教を行うプログラム

その他

  • 引退競走馬杯(RRC):乗用馬・馬術競技馬への転用の入口となる、引退競走馬限定の馬術競技会(2018年〜)
  • 国際フォーラム(IFAR):引退競走馬のアフターケアについて各国が情報交換する場。JRAによると2017年から開催され、日本は初回から毎年参加。2024年の第8回は北海道札幌市で開かれ、初の日本開催となった

引退馬の行方はどうやって調べる?

調べられること

  • JBIS-Search(公益社団法人日本軽種馬協会が運営)は国内の競馬情報データベースで、馬名から検索して馬の基本情報を確認できます。登録状況(現役馬・引退馬・種牡馬・繁殖牝馬・輸出馬)で絞り込むこともできます。
  • ただし、JBIS-Searchのヘルプでは、「種牡馬」「繁殖牝馬」の区分は過去に一度でも繁殖登録された馬を指すとされています。この区分に入っていても、現在も繁殖に供用されているとは限りません。
  • JBIS-Searchの「供用種牡馬一覧」では、年ごとの供用種牡馬について供用地(供用場所)などを見ることができます。ほかの馬の現況がどこまで載っているかは馬ごとに異なります(2026年9月26日確認。掲載内容や区分はサイトの仕様変更で変わる可能性があります)。
  • 牧場・クラブ・支援団体が公式サイトや公式SNSで近況を発信している場合は、それが一次情報にあたります。

調べる際の注意

  • 現在の所在は変わることがあります。情報には必ず日付があるか確認しましょう。
  • 個人ブログやSNSの非公式な投稿は、誤りや古い情報が含まれる可能性があります。
  • 公式な発表が見つからない馬については、行方を断定できません。「確認できない」ことがそのまま現状です。
  • 引退馬協会によると、同協会が活動を始めた20年以上前は、競走馬や乗馬の行き先を尋ねること自体が馬業界のタブーとされていました。近年はようやく、引退馬の行き先を知りたい、考えたいという声を耳にするようになったといいます。

まとめ

  • 中央競馬では、競走馬登録を抹消した馬の行き先を馬主と調教師が話し合って決める。登録抹消後に地方競馬で走り続ける馬もいる。
  • 進路には、地方競馬への転出、繁殖馬、乗馬などがあり、殺処分となる馬も少なくないと引退馬協会は説明している。
  • 進路別の頭数・割合を示す公式データは見当たらない。
  • TAWや引退馬協会など、引退馬を支える団体や制度がある。
  • 馬の現況は、公式発表を日付付きで確認するのが基本。

個別の馬の引退後やその後の歩みは、当ブログの「名馬の軌跡」カテゴリーの各記事で紹介しています。

各団体の事業内容や統計は更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

主な情報源: JRA公式サイト(馬主向けFAQ、引退競走馬への取組み)、JAIRS公式サイト(軽種馬登録ニュース)、認定NPO法人引退馬協会公式サイト、一般財団法人TAW公式サイト、JBIS-Search(ヘルプ)

タイトルとURLをコピーしました